829の日




「白馬くん、誕生日おめでとう!」
「おめっとさん」
「おめでとー。マジックでもするか?」
「おめでとーさん!」
「ありがとう、みんな。僕の為にこんなに盛大にお祝いしてくれて嬉しいよ」
「頑張ってみんなでご馳走の用意もしたの。じゃあ始めようか」
新一と蘭がダイニングへ行き、戻ってくると蘭がドンと大皿をテーブルの上に置いた。新一はカバーの掛かった機械らしきものを持っている。
探の目の前に現れたのは大量の肉と野菜、それと大きな鉄板。


「……これは何ですか?」
「何って、焼肉やんだよ」
「蘭ちゃんお手製の特製ダレだぞ〜うまいぞ〜」
「もうっ、快斗くん味見ばっかりするんだもん」
「いやー、すっげぇ美味しかったからさ!ついね」
「俺も一回工藤と姉ちゃんと焼肉やったことあるんやけど、そらもうウマかったで!店より美味いんとちゃう?」
「ったりめーだろ。蘭が作ったんだから」
ポンポンと進む会話に、呆気に取られていた探はようやく言葉を吐いた。
「何故僕の誕生日に焼肉なのですか?ノーブルな僕には、ほら…フレンチのフルコースとか…」
「何言うてんねん。お前の誕生日やから焼肉なんやぞ?」
平次の言うことが理解出来なくて、白馬はますます呆けた顔をした。

「分かんねぇか?おめえの誕生日8月29日だろ?つまり、829(焼肉)ってワケさ」
「バカな…!」
「アレ〜、探クン、知らなかったぁ?」
探偵と怪盗が今にも吹き出しそうなニヤけた顔で探を揶ってきた。
「そうなの?じゃあこれからは焼肉とケーキで毎年白馬くんのお誕生日会ができるね!」
蘭は両手を合わせて、無邪気な笑顔を零した。
「良かったなぁ白馬、これで毎年姉ちゃんの料理が拝めるで!」
大阪の探偵も探にワザとらしい盛大な笑顔を向けてくる。

男三人は明らかに探に対する悪ふざけであるが、蘭は単に男共の提案に乗っただけだろう。


探は怒りを静めて焼肉を堪能することにした。イギリス生活が長いため焼肉もあまり食べたことがないし、ふざけてるにしても皆祝ってくれるという。ここは今日集まってくれたことを感謝すべきなのかもしれない。
それに、蘭特製だというタレも試してみたかった。料理上手と評判の彼女、きっと美味しいに違いない。

いい匂いのしてきた鉄板に近づこうとすると、新一が探の隣に来て囁いた。
「蘭特製っつっても、お袋に教えてもらった工藤家直伝のタレだからな」
さりげない調子を装っているが、笑っていない瞳にドスの効いた低い声が新一の真剣さを物語っている。
あまり調子に乗るなと牽制しているようだ。
「……承知しました」


蘭の傍を離れない新一に、楽しそうに喋りながら野菜を切っている蘭、そんな二人をからかっている快斗と、肉を焼きながらも会話に混ざり場を盛り上げる平次。
こんな賑やかな誕生日はいつ以来だろうか。
探は笑みをフッと零すと騒がしい輪の中に入っていった。











白馬氏誕生日おめでとう!一日限定公開です。
8月29日は焼肉の日でもありますが、歯肉の日でもあります(いらぬ情報)。
新蘭+白+快+平ですが、基本みんな蘭ちゃんが大好きです。
[2009.8.29]

限定解除 [2009.11.5]


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